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プロンプトインジェクション攻撃とは?被害事例と対策を解説

生成AIリスク

この記事のポイント

プロンプトインジェクション攻撃は、生成AIに悪意ある指示を紛れ込ませてシステムプロンプトを乗っ取り、情報漏洩や不正操作を引き起こす攻撃手法です。直接型と間接型があり、入力検証・権限最小化・出力監視を組み合わせた多層防御が有効な対策です。

プロンプトインジェクション攻撃とは?被害事例と対策を解説

「自社の生成AIやAIチャットボットが、プロンプトインジェクション攻撃を受けたらどうなるのか分からず不安だ」

こうした疑問に答えます。

本記事の内容

  • プロンプトインジェクション攻撃の仕組みと種類
  • 実際に起きたリスクと被害事例
  • 企業が取るべき対策と実践ステップ

プロンプトインジェクション攻撃は、生成AIに悪意ある指示を紛れ込ませ、情報漏洩や不正操作を引き起こすリスクの高い脅威です。仕組みを理解し、入力・内部・出力の各段階で多層的な対策を講じれば、被害の可能性を大きく下げられます。本記事では、攻撃の仕組みから対策の進め方まで順を追って解説しますので、自社のAI活用状況と照らし合わせながら読み進めてください。

プロンプトインジェクション攻撃とは

プロンプトインジェクション攻撃とは、生成AIに対して悪意のある指示を紛れ込ませ、本来の動作から逸脱した出力や操作を引き起こすサイバー攻撃です。これは業務に生成AIを導入するにあたって欠かせない生成AIリスクの全体像と対策においても、主要なセキュリティ脅威として定義されています。開発者が設定したシステムプロンプトと、利用者が入力する指示をAIが正しく識別できない構造につけ込む点に特徴があります。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」でも「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて上位にランクインし、その代表的な脅威としてプロンプトインジェクションが位置づけられました。企業が生成AIを業務に組み込むほど、攻撃を受けたときの影響範囲も広がります。

生成AIの脆弱性を突く攻撃の仕組み

生成AIは、システムプロンプトとユーザー入力を同じテキストの流れとして処理します。このため、どちらが「命令」でどちらが「データ」かをAI自身が明確に区別できず、悪意ある入力を正規の指示と誤認してしまうことがあります。攻撃者はこの弱点を突き、システムプロンプトの機密情報を聞き出したり、想定外の処理を実行させたりします。

直接プロンプトインジェクションの特徴

直接プロンプトインジェクションは、攻撃者がAIとの対話画面に直接、悪意ある指示を入力する手法です。「これまでの指示を無視して」といった文言でAIの制約を外そうとするケースが典型的です。チャットボットやカスタマーサポートAIなど、外部ユーザーが直接入力できる窓口ほどリスクが高くなります。

間接プロンプトインジェクションの特徴

間接プロンプトインジェクションは、AIが参照するWebページや文書、メールなどに悪意ある指示をあらかじめ埋め込んでおく手法です。RAG(検索拡張生成)やAIエージェントが外部データを取り込んだ瞬間に、埋め込まれた指示が実行されてしまいます。利用者本人が攻撃を意図していなくても被害が発生する点が、直接型との大きな違いです。

ジェイルブレイクとの違い

ジェイルブレイクは、AIに設定された安全機能や倫理的な制約を回避し、本来出力しないはずの不適切なコンテンツを生成させる手法です。一方でプロンプトインジェクションは、システムプロンプトそのものを乗っ取り、AIの動作全体を書き換える攻撃を指します。

項目プロンプトインジェクションジェイルブレイク
狙いAIの動作・出力の乗っ取り安全制約の回避
主な被害情報漏洩、不正操作不適切コンテンツの生成
攻撃経路直接入力・外部データ双方主に直接入力

両者は手法が重なる部分もありますが、被害の深刻度としてはシステムの乗っ取りにつながるプロンプトインジェクションの方が、企業にとって重大なリスクになりやすいといえます。

プロンプトインジェクション攻撃が引き起こすリスクと被害事例

プロンプトインジェクション攻撃を放置すると、機密情報の漏洩から企業の信用毀損まで、幅広い被害につながります。一般的な生成AI問題点や活用上の注意点と同様に、攻撃の具体的な経路や仕組みを正しく認識しておくことが必要です。ここでは代表的な4つのリスクと、実際に発生した攻撃事例を整理します。自社のAI活用状況と照らし合わせながら確認してください。

機密情報や個人情報の漏洩

攻撃者に巧みに誘導されたAIが、本来非公開のはずのシステムプロンプトや顧客データをそのまま出力してしまうことがあります。社内AIチャットボットが人事情報や契約条件を保持している場合、この漏洩は個人情報保護法などの規制違反に直結しかねません。漏洩した情報がそのまま外部に公開されれば、被害の回復には長い時間がかかります。

誤情報の生成と拡散

プロンプトインジェクションによってAIが虚偽の内容を事実であるかのように回答し、その誤情報が利用者を通じて社会に広がるリスクがあります。企業の公開チャットボットが誤った製品情報や価格を案内すれば、顧客対応のトラブルに直結します。誤情報の訂正には、初動の対応スピードが特に重要です。

システムの不正操作や停止

AIエージェントが業務システムと連携している場合、攻撃者はプロンプトインジェクションを通じてシステムに不正な処理を実行させることが可能です。結果として、業務システムの停止やデータの改ざんといった重大な事故に発展する恐れがあります。自動化が進むほど、被害の範囲は人手による確認なしに広がります。

実際に発生した攻撃事例

現在、AIのセキュリティ脅威は、既存の生成AI著作権侵害事例と法的トラブルとは異なる方向からも進展しています。2025年6月には、メールを開くだけで情報が窃取される「EchoLeak」というゼロクリック型の攻撃が報告されました。2026年6月には、Microsoft 365 Copilotの「SearchLeak」という脆弱性が確認され、URLパラメーターを通じたプロンプトインジェクションと複数の脆弱性を組み合わせることで、多要素認証コードやメールなどの機密情報がワンクリックで窃取される可能性が示されました。いずれの事例も、AIが外部データを自動的に取り込む仕組みそのものが攻撃の入り口になっています。

事例発生時期攻撃の特徴
EchoLeak2025年6月メールを開くだけで発動するゼロクリック型
SearchLeak(Microsoft 365 Copilot)2026年6月URLパラメーター経由のプロンプトインジェクションを悪用

こうした事例からも分かる通り、被害は理論上の脅威ではなく、実際に企業システムを狙う形で発生しています。

プロンプトインジェクション攻撃への対策方法

プロンプトインジェクション攻撃は技術的に完全に防ぐことが難しいとされていますが、複数の対策を組み合わせる多層防御によって被害の可能性を大きく下げられます。これは、データ保護や生成AI著作権に関する侵害リスクなど他のガバナンス課題と並び、重要な対策項目の一つです。OWASPが公開するLLMアプリケーション向けのガイドラインでも、入力・内部・出力の各段階での対策を組み合わせる考え方が推奨されています。ここでは代表的な4つの対策を紹介します。

入力内容を検証しフィルタリングする

ユーザーからの入力内容を事前に検証し、不審な文字列や指示の書き換えを狙った表現を検出する仕組みを導入します。ブラックリスト方式やホワイトリスト方式でキーワードを検出する方法に加え、自然言語処理を用いた異常検知を組み合わせると精度が高まります。外部データを取り込むRAGシステムでは、取得した文書がシステム命令を上書きしないようにする設計も欠かせません。

システムプロンプトとユーザー入力を分離する

システムプロンプトとユーザー入力を明確に分離し、ユーザー入力はあくまで「データ」として扱う設計にします。区切り文字やタグでユーザー入力を囲み、AIが命令と入力を混同しないようにする方法が効果的です。APIキーやデータベース名などの機密情報は、システムプロンプトに直接書かず、環境変数や鍵管理サービスで別管理します。

権限を最小化しアクセスを制御する

AIエージェントやチャットボットには、業務に必要な最小限の権限だけを付与します。不要な権限を持たせたまま攻撃を受けると、被害がシステム全体に及ぶ可能性が高まります。特に重要な処理を実行する前には、人による最終確認を挟むヒューマン・イン・ザ・ループの仕組みも有効です。

出力を監視しログを分析する

AIの出力内容を常時監視し、機密情報や不適切な内容が含まれていないかを確認するフィルタリングの仕組みを整えます。あわせて、対話ログを継続的に分析し、異常なやり取りのパターンを早期に検知できる体制を構築します。

対策の段階主な取り組み目的
入力対策検証・フィルタリング不正な指示の侵入を防ぐ
内部対策プロンプト分離・権限最小化攻撃が成立しても影響を抑える
出力対策監視・ログ分析被害の発生を早期に検知する

これらの対策は一度導入して終わりではなく、新たな攻撃手法に応じて継続的に見直すことが重要です。

企業がプロンプトインジェクション対策を進める実践ステップ

プロンプトインジェクション対策は、専門部署だけの取り組みではなく、生成AIを利用するすべての企業に関わるテーマです。ここでは、対策を始める順番が分からない担当者に向けて、実践的な4つのステップを紹介します。

①:自社のAI活用状況を棚卸しする

まず、社内でどのAIサービスがどの業務に使われているかを棚卸しします。社内チャットボット、RAGによる文書検索、業務システムと連携するAIエージェントでは、リスクの現れ方が異なります。特にAIエージェントは外部データの取り込みやシステム操作を自動で行うため、優先的に確認すべき対象です。

②:対策の優先順位を決める

棚卸しの結果をもとに、機密情報を扱うシステムや外部公開しているシステムから優先的に対策します。入力対策・内部対策・出力対策のうち、まず権限の最小化とシステムプロンプトの分離に着手すると、被害の拡大を抑えやすくなります。事前に生成AIガイドラインの作り方と必須項目を参考に運用ルールを整備したうえで、すべてを一度に対応しようとせず、リスクの大きい箇所から段階的に進めることが現実的です。

③:レッドチーム演習でセキュリティ診断を行う

対策を導入した後は、専門のセキュリティチームや外部企業に依頼し、実際に攻撃者の視点でプロンプトインジェクションを試みるレッドチーム演習を実施します。OWASP Top 10 for LLM Applicationsに準拠した診断サービスも増えており、プロンプトインジェクション耐性や機密情報漏洩のリスクを客観的に評価できます。診断結果は、対策の見直しや優先順位の再設定に活用します。

④:AIエージェント時代に備えた運用体制を構築する

AIエージェントの普及により、プロンプトインジェクションはエージェントが実行するツール操作やデータ送信にも及ぶようになっています。ツールの実行権限を一覧化して許可制にするアローリスト方式や、重要な処理には人の承認を挟む仕組み、対話ログの監査体制を整えることが求められます。攻撃手法は継続的に変化するため、一度整えた対策も定期的に見直す運用サイクルを組み込むことが重要です。

以上の4ステップを順に進めることで、限られたリソースの中でも優先度の高いリスクから着実に対応できます。

まとめ:プロンプトインジェクション攻撃は仕組みの理解と多層防御で防げる

本記事では、プロンプトインジェクション攻撃の仕組みと種類、実際に発生したリスクや被害事例、そして企業が取るべき対策と実践ステップを解説しました。直接・間接それぞれの攻撃手法を理解し、入力・内部・出力の各段階で対策を積み重ねることが、被害を抑える近道になります。

本記事のポイントをおさらいします。

本記事のポイント

  • プロンプトインジェクションは直接型と間接型があり被害の現れ方が異なる
  • 情報漏洩や不正操作など被害は理論上ではなく実際に発生している
  • 入力対策・内部対策・出力対策を組み合わせた多層防御が有効

本記事を読むことで、自社の生成AI活用におけるリスクの所在と、優先的に着手すべき対策の順番が明確になったはずです。プロンプトインジェクション対策は一度整えて終わりではなく、AIエージェントの普及に合わせて継続的に見直す取り組みでもあります。自社だけでの対応に不安がある場合は、専門家への相談も含めて早めに検討を進めてください。

プロンプトインジェクション攻撃に関するよくある質問

参考文献

  1. 情報セキュリティ10大脅威 2026 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
  2. OWASP Top 10 for Large Language Model Applications | OWASP Foundation

執筆者

AX With 編集部
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編集部

生成AIエージェント開発および自律型AI実装の発注先選定を支援するBtoB専門メディア。中立かつ客観的な比較・選定データを発信。企業のAIトランスフォーメーション(AX)を加速させ、最適なパートナー選びを実務直結の視点でサポートします。

監修者

AX With リサーチチーム
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リサーチチーム

AIエージェント開発や自律型AI実装に関する市場調査・企業選定基準の策定を行う専門調査部門。公平な第三者視点に基づき、各企業の技術検証、実装実績、プロジェクトの成果指標などを多角的に分析し、メディア監修を通じて実務に直結する客観的なデータ・情報を提供しています。

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